さっきのことを、彼女のいきなりの態度の変化のことを聞こうか悩んだけれど、止めることにした。

 なんとなく、言わないほうがいいのかと、勝手に感じていた。

 ようやく椅子に座る。

 そこからは庭の風景が見えて、空を向いて太陽の光を浴びている黄色の花の姿が目に入ってきた。地面に近いところでは、ピンク、オレンジ、白と色とりどりの花々が咲いている。

 だけどその花の名前が分からなかった。その分からない名前の花を見ながら、まだ温かいマドレーヌを手に取ると、それを一口食べてその甘さを堪能する。

 甘いのが苦手な僕に、祖母は幼いころから甘さの控えめなお菓子を作ってくれていた。

 花を見ていると、なんとも気持ちよさそうに風に吹かれて揺れている。

 マドレーヌを持ったまま庭に続くガラス扉を開けた。そこには、三足のサンダルがあり、僕のそれは青色で、祖母と祖父のモノは白色だ。

 青色のサンダルだけ、やけに新しく、傷が一つもない。

 サンダルを履いて、僕は庭にある椅子に座った。 
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