なんとなく花の香りがするような、それとも視覚に入る花の姿が脳内にその香りを漂わせているのか分からないけれど、その匂いをすうっと吸い込む。

 空を見上げた。彼女の言っていた星というのは、一体どこにあるのだろう、それはどれくらいの大きさで、その星は何で構成されているのだろう。

 そんなことを真面目に考えてしまう。

「あるわけないのにな、そんなこと」

 残りのマドレーヌを口の中に入れると、家の中に戻った。

 乾いた口に紅茶を注ぎ込む。

 その紅茶は、口の中の甘さを全て流す。甘さの代わりにハーブの独特な風味が口の中に広がった。

「そうだ、今度焼きたてのお菓子を音ちゃんに持って行ってあげたらどうかしら。きっと、喜ぶと思うわ」
「そうだね、そうするよ」

 叶うかもわからない約束をして、残りの紅茶を飲み干した。
 
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