数日後、僕は島に唯一ある商店に来ており、そこで一種類しかないノートを買う。 

 普段住んでいる東京では、優柔不断な僕はノート一冊買うのですら十分は掛かってしまい、買い物一つでも疲れてしまう。

 しかし、ここでは選ぶという労力すら必要なく、そこにあるものを手に取って購入するしかない。選択肢がないことがこれほどまでに楽であるということを、今まで知らなかった。
 
 少し古びて変色しているノートを商店のおばあちゃんのところに持っていくと、やはり島と言ってもきちんと消費税はついており、百円と消費税を支払ってその商店を後にした。

 何気なく視線を横に移動させた時、またあの人の姿を見つける。

 僕が彼女に気付いた瞬間、彼女もまた僕に気が付いた。すると、彼女は走って僕のもとに来る。

 僕の前で止まると、息を整えて言葉を発した。

「ねえ、今から行きたいところがあるの」
「今から?」
「ええ。そう、こっちよ」
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