「ここがね、その星の風景とすごく似ているの。だから、いつもここに来てしまうの」

 微笑んで言うと、彼女は目を瞑り聞こえてくる鳥の鳴き声に耳を傾けているようだった。

「それと」

 と、彼女は目を開けて僕の方に顔を向ける。 

「ここには、人が来ない」

 それを言った時の彼女の声色は、今まで聞いたものとは全く違ったものだった。

 その声には、今までに何があったのかは分からないが、暗く重苦しい何かが込められているように、僕の耳には聞こえた。

 でも僕は、それに対して何もいうことができないでいた。彼女も、僕に対して何か言葉を望んでいるように見えなかった。

「私と、この自然と、そうして動物しかいない。でも、私ね、あなたを見たとき、何故だかあなただけは他の人となんだか違うと思った。私と話をしてくれる人だって、直感したの」

 彼女は、僕の手を掴む。

 彼女の手の感覚に、その柔らかさに、全神経が集中して、うまく呼吸が出来ない。

 彼女は、その掴んだ僕の手を引いて、より奥地へと連れて行った。もっと、この景色を見ていたかった。

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