いつものようにラフな格好をして、浜辺に向かう。

 彼女は、もう来ているだろうか。

 少し早く家を出すぎただろうか。曇りがった空を見て、雨が降ったりしないだろうか、などと要らぬ心配をしてしまう。 
  
 彼女が何を聞かせてくれるのか分からないから、緊張や不安で押しつぶされそうになる。

 もっと、リラックスしてもいいんだぞ、と自分に言い聞かせる。

 見えて来た。浜辺が見えて来た。

 あの時と同じだ。彼女が海の方を向いている。僕は、彼女の姿を見ている。

 彼女がこちらを見た。僕に手を振っている。

「ごめん、待った?」
「ううん、今来たとこ」

 彼女は、僕の顔を見た後再び海の方を見た。 

「ねえ」
「ん?」

「私、薫さんとこの星で生きてみたいの。ううん、ちゃんとまた、生きていきたいの、前を向いて」
「それは……」

「だから、自分の家に帰るわ。この島を、一旦さようならするの。薫さんも、帰るんでしょう?」

 彼女の声は、はっきりとしていた。今までの中で一番、その声は僕の耳にストレートに入ってきた。

「うん、そうだね」

 だから僕も迷いなく答えた。

「あっちに行っても、会ってくれる?」
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