「もちろんだよ。いつでも、会いに行く」
「よかった……なんだか、安心したらお腹空いて来た」

 可愛らしい高いお腹の音が、この朝の静寂の中に響く。

 僕たちは、顔を合わせて笑う。

「よし、行こうか。パン食べに」
「ええ、行きましょう」

 彼女は、その手を僕の方に差し伸べた。僕は、それをしっかりと強く、もう彼女が離れていこうとなんて思わないように握る。

「将来、薫さんのおばあさんとおじいさんのように、二人でここに住めたら最高ね」
「うん、きっとくるよ。その未来」
「楽しみ」





「二人とも、なんだかすごく明るい表情してる」

 ダイニングに着くと、朝食の準備をしている祖母と、新聞を読んでいる祖父がいた。

「ああ、そうだね。なにかいいことでもあったのかい?」
「うん……人生の中でも最高の出来事だよ」
「そうか、それはよかったな」

 うんうんと、祖父は深くは聞かなかったけれど、納得した笑みを浮かべた。

 やはり、祖父にはなんでも分かってしまうのだろうか。「さあ、二人とも座って。少し早いけど、焼き終わったし、食べましょう」

「うん」

 四人でテーブルを囲んだ。

 なんだか、本当の家族のような気がした。


「「「「いただきます」」」」

 その声が、部屋中に響いた。
 
 
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