別れと弱さと始まりと

「別れよう」私から別れを告げた。


「嫌だよ、許してくれ」簡単に言っているが、そう簡単に許せる行為だろうか?


「無理……無理!無理!」誰かと共有なんてゾッとする。


「のぞみが好きなんだ!別れたくない!」


俊哉が必死なのは伝わるけど、きっとその気持ちも直ぐに薄れるよ。


「私、もう俊哉の事信用出来ないし、一緒にいたとしても心から安心することはないと思う。そんな人とは付き合えないよ、それにそのベッドになんて触れたくない」自分の気持ちを正直に伝えた。


鞄の中からこの部屋の鍵を取り出してテーブルの上に置く。


「この鍵返すから、私の部屋の鍵を返して」催促しても、動かない。


「どうしたら許してくれる?」


呆然としたように言うが、こっちが被害者だ。勘違いしないでほしい。


「どうしたらもなにも、許すことはないから!あなたが招いた結果よ」


「………」俯いて動かない。


「鍵、返してもらうね」


俊哉の鞄から取り出した。


「さようなら」もう会うことはないだろう。


俊哉はまだ呆然としていたが、私は荷物を持ち部屋を出た。


前が見えにくかった。涙で顔がぐしゃぐしゃになっていたのに気付かなかった。


好きだったよ、俊哉。



……凄く好きだった………




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