別れと弱さと始まりと
のぞみが家に来た。会う約束はしていたが、今日は家に来て欲しくなかった。
バレてしまった。
謝っても許して貰えそうにない。
泣きながら別れを告げるのぞみ。
抱き寄せたくても出来る筈ない。
権利を自分で放棄してしまったのだから…
のぞみが部屋を出て行った。
「好きだよ のぞみ」
届かない言葉を口にした。
自分が甘かったのか、隙をつかれてこんな事になってしまった。
本気になったのは学生以来だった。
いつもは相手から告白され適当に付き合い、ウザくなると別れた。
本気だと別れは辛いことを知った。
幸せはこんなにも簡単に手のひらからこぼれ落ちてしまった。
いつかあの上司の上に立つ事を心に刻んだ。