誠に不本意ではございますが、その求婚お受けいたします
あぁ、でも落ち込んでいる場合じゃない。
まだ手術ができないと決まったわけじゃないし、化学治療だったあるよね?
ハナちゃんに悟られないように、明るくいなくちゃ。
「ハナちゃん、先生の話を聞いてきた……よ」
――――と。
ハナちゃんのベッドの傍に誰かいる。
先生……じゃないよね? 白衣を着てないし。
でも、スーツ姿の若い男性なんてと首を傾げた瞬間、その男性がこちらを向いた。
「じょ、常務!? どうしてここに!」
「さっき君が電話で病院に行くと言っただろ」
さっきの電話、常務だったんだ……!
「てっきり足のことで病院に行くのかと思って飛んで来たが、お祖母様が入院することになったんだね。大変だったな」
「え、あ、いや」
予期せぬ出来事に言葉が出てこない。
そんな私を他所に、常務はハナちゃんの手を握った。
「もっと僕を頼ってくれてもいいのに、いつも1人で無理をするんです。寂しいな、婚約者なのに」
誰、この人、二重人格ー!?
というか、婚約者って!
「あらら、ダメよ百花。頼りになる人には素直に甘えないと」
ハナちゃんも、すっかり騙されているよ、この人に!
「ハナちゃん、違うの。あのね……」
「生きてるうちに百花のウエディングドレス姿を見れるなんて夢みたい! それもこんな良い人と結婚するなんて!」
「ハナちゃん、あの」
「お任せください、僕が百花さんを世界一幸せな花嫁にしますよ」
「まぁ、心強い」
「だから、ハナちゃん」
「それでは、僕は仕事がありますので」
「わざわざありがとうね。百花、桐ケ谷さん送って差し上げて」