誠に不本意ではございますが、その求婚お受けいたします


やめてよ、もう本当に恥ずかしい……。

でもこの時の律さんは、フォーマルに磨きがかかり神がかった容姿をしていたと思う。

当の本人は予定外の披露宴が相当面倒だったらしく、不機嫌極まりなかったけど。


「で、どうなの? 新婚生活は」


頬をピンクに染めた淑女が、私の脇腹を肘で突いた。

ハナちゃんの隣のベッドで1番仲の良い、絹江(キヌエ)さんだ。


「どうって、普通ですよ」

「普通なわけないでしょう、新婚の若い2人が! 夜通し一緒にいたら、もう!」


絹江さんはそこまで言うと、やだぁと招き猫のように右手で空をかいた。 

この人なんだか、果歩に似てるような……。



* * *


「まだ、起きていたのか?」

「あ、お帰りなさい」

「別に俺を待っている必要はない」

「私もさっきお店から帰ってきたところなんです、明日の仕込みに時間がかかってしまって」

「遅くなる時は、タクシーを使え」

「はい」


同室マダムたちは私たちの新婚生活に興味深々だったけど、律さんはただの同居人なので何か起こるわけもない。

それでも、一生縁がないと思っていたタワーマンション暮らしにやや心は踊っている。

だって夜景が本当にキレイで……!

勿体なくて眠れない。


「ご飯、食べますか? お店の残しかないですけど」

「あぁ、貰おうかな」

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