誠に不本意ではございますが、その求婚お受けいたします
律さんは、自分の決め事を厳守したいタイプのようだ。
テリトリーを侵されるのも嫌なようだし、ペースも崩されたくないらしい。
もちろん、私たちの寝室は別々だし共有スペースにおいても私物はしっかり分けられている。
私としても、それはとっても快適なのだけど。
”他人”だと、常に宣言されているようで少し寂しい……ような?
もし、私が明日の朝、目を覚まさずに死んでしまっても、気が付かずにずっと放置されるんじゃないか。
そんな不安と寂しさを感じながら、部屋干ししていた着物を畳もうとした。
―――と。
「ああああああああ!!!!」
大事な着物なのに、シミが付いてる!
何だろう、お醤油?
あぁ、私の馬鹿! どうして干す時に気が付かなかったの?
若干パニックになって、その場をウロウロしているところだった。
「おい、どうした!?」
律さんが私の部屋に駆け込んで来た。
「え?」
「今、大声で叫んだだろう。何があった?」
「あ、あの着物にシミが……」
「シミ?」
律さんはよほど慌てて来たのか、スリッパを片方履いていなかった。
お風呂に入っていたようで、濡れた髪の毛も半渇きのまま。
ポカンと口を開いて、私の着物に視線をやっている。