誠に不本意ではございますが、その求婚お受けいたします
* * *
「兄貴が店に来た?」
その日の夜、律さんにお兄さんの話をすると露骨に眉をひそめた。
「あ、違うんです。単に私の心配をしてくれたみたいで、優しいお兄さんですね」
律さんも私と同じように、『お兄さんが視察しに来たと思っているのでは?』 と考えた私は、その誤解を解こうとしたのだけど。
彼は何か考え込むように、自分の額に手を当てた。
「兄貴は、何か言ってなかったか?」
「週末の食事会は気楽にくるように、と」
「それだけ?」
「はい」
「そうか、まぁいい。だけど、あんまり兄貴と仲良くするなよ」
「それは、どういう意味ですか?」
「意味なんてどうでもいいだろ。どうせ3年の付き合いだ、適当に相手しろ」
不機嫌さを隠すことなくそう言い捨てた律さんは、私の顔を見ることなく寝室に入ってしまった。
もしかして、お兄さんと仲が悪いのかな……?
どうせ3年の付き合いだ、なんて言い方は少し酷いよね。
その3年間は律さんの妻であり、親戚付き合いだってこなさなきゃいけないのに。
(まぁ、いいや。ハーブティーでも飲んで寝よう)
安眠作用があるのは、カモミールだよね。
あ、でもこの前買ったオレンジブロッサムも良質な眠りを誘うって書いてなかったっけ?
キッチンでごそごそしていると、律さんが寝室から出てきた。