誠に不本意ではございますが、その求婚お受けいたします
「……さっきは言い過ぎた。ごめん」
「えっ、あ、いえ……気にしてないです」
意外。
世間一般のおぼっちゃまって、自分が悪くても謝ったりしないイメージだけど。
律さんは、ちゃんと反省してちゃんと謝ってくれるんだ。
「何か飲もうとしてる?」
「ハーブティーを淹れようかと。律さんも飲みますか?」
「あぁ、頼む」
どちらにしようか迷っていたハーブティーは両方とも辞めて、奥にあるローズヒップとハイビスカスのブレンドを手に取った。
律さんの疲労が回復しますように。
* * *
(思った以上に豪華……!)
週末の食事会は、某高級ホテルのレストランで行われた。
念のため私が持っている中で1番高価なワンピースを着てきたけど、大丈夫かな……。
窓ガラスに映る自分を見つめ、不安になる。
せめて髪はアップにすれば良かった……。
「おっ、律、百花ちゃん」
「こんにちは」
レストランには、すでにお兄さん夫婦が着席されていた。
お姉さんに会うのは結婚式以来だけど、あの時に負けず劣らずゴージャス……。
ハリウッド映画から飛び出してきたみたいだ。
「こんにちは、百花さん」
「ご無沙汰しております」
「可愛いワンピースね、どこのブランド?」
「えっと……」
困っていると、お兄さんが助け舟を出してくれた。
「いきなり失礼だろ、杏奈。ごめんね、百花ちゃん」
「いえ」
そんなやり取りをお姉さんはガン無視で、お兄さんの服を引っ張る。
「新ぁ、喉乾いた」
「はいはい、ウエイターを呼ぶから待ってろ」
お兄さん、完全に尻に敷かれてますね……。