誠に不本意ではございますが、その求婚お受けいたします
食事会は険悪な雰囲気のまま続き、最後のデザートが運ばれてきた。
凄腕パティシエが作ったケーキとのことだったけど、楽しむ余裕もなく。
大好きなハーブティも、味気ない。
家族の食事会に私が歓迎されていないだけじゃなく、桐ケ谷家そのものも微妙な仲というか。
複雑な家庭であることが分かった。
こんな息の詰まるような家族がいて、自分の嫌いな女性と結婚させられそうになっている。
律さんが嫌がっていたのも頷ける。
「あーお腹いっぱい。ご馳走さまでした」
お姉さんは、鋼のメンタルなのかな。
満足そうに自分のお腹を撫ぜた彼女は、私に視線を向けた。
「百花さん、一緒にお手洗い行かない?」
それって、いわゆる呼び出しってやつですか?
礼儀のなってない新米嫁を、先輩嫁が〆る的な……?
何だかよく分からないけど、気まずいこの場に留まるよりもマシだと考えた私は、お姉さんと連れ立ってお手洗いに行くことにした。
* * *
レストランを出てお姉さんが向かった先は、お手洗いではなくラウンジだった。
やはりお説教……! そう思いきや、
「せっかくのフレンチが台無しだったわね。お腹いっぱいになった?」
「正直いうと、何を食べたか記憶にないです」
「美味しいワインでお口直ししましょう」