誠に不本意ではございますが、その求婚お受けいたします
お姉さんはそう言うと、スタッフに合図を送る。
しばらくしてグラスワインとピンチョスの盛り合わせが運ばれてきた。
「ここで適当に時間を潰しておけば、お父さんたちは痺れを切らして帰るわ」
「挨拶しなくていいんでしょうか?」
「いいわよ、そんなの気にする人たちじゃないわ」
そういうものなのか。
というか、もしかしてお姉さんは私を気遣って連れ出してくれた?
説教されるとか勝手に思い込んで、ごめんなさい……。
「びっくりしたでしょう、お母さんのヒステリー」
「……はい」
「あの人はね、新や律くんに自分のことを母だと認めさせたいのよ」
そういえば、『本当のお母さんじゃない』って言ってったっけ。
じゃぁ、後妻さんってことなのかな。
知れば知るほど、複雑な家庭なのね。
「ところで、百花さんと律くんはどこで出会ったの?」
「え?」
「恋愛結婚なんでしょう? 律くんはね、マスコミ関係のお嬢さんと結婚する予定だったの。その縁談を蹴ってでも結婚したい相手がいるって聞いた時は、驚いたわ。だって、律くん、女っ気が全然なかったもの」
「そ、そうなんですか」
何だか情報が多すぎて、頭が追い付かない。
マスコミ関係のお嬢様っていうのが、律さんの言っていた嫌いな相手ってことだよね。
女っ気が全然なかったって言われても……どう話せば、上手く誤魔化せる?