誠に不本意ではございますが、その求婚お受けいたします
「えっと……」
「出し惜しみしなくたっていいじゃない」
「惜しんでいるわけじゃないんですけど、」
「何だかあなたたちって、ちっとも新婚カップルっぽくないわよね。お見合い結婚だった私たちでさえ、新婚の頃は熱かったわよ」
そんなことを言われても、実際に熱くないですし。
あぁ、でもやっぱり私たちの関係って傍からみたら違和感があるんだろうなぁ。
こういう時のため、答えを考えておけばよかった。
――――と、
「百花」
不意に呼ばれて、振り向くと律さんが立っていた。
「どこにいるかと思えば、ここだったか」
「律さん……」
「お姉さん、悪いけど。百花をからかうのは止めてくれ」
律さんはそう言うと、私の手を取り立つよう促した。
そして、そのまま私の手を絡めるようにして握りしめる。
名前で呼ばれたのも、手を繋いだのも初めてのことで、ほんのり顔が熱くなる。
「からかってないわよ、別に。嫁同士親睦を深めようと思っただけ」
「だったらいいけど、百花は人一倍恥ずかしがり屋なんだ。今日はもうこの辺りにして」
「いいわ。百花さん、またね」
「はい……あ、今日はありがとうございました」
お姉さんに会釈をして、ラウンジを後にする。
律さんはホテルを出るまでずっと、私の手を離さなかった。