誠に不本意ではございますが、その求婚お受けいたします


え? 律さんが?
驚いて聞き返すと、ハナちゃんはゆっくり頷いた。
最近は熱が出たり、痛みがあったりで起き上がっている時間が減ってきたという。
それでも、病状は落ち着いていると聞いていたけど……。


「昨日はちょっと咳が酷くてね。そうすると、律くんが背中をさすってくれたの」

「全然知らなかった」

「百花は働き過ぎで疲れてるから休ませてあげたいって言ってたわよ。本当に優しい旦那さんね」

「働き過ぎだなんて。ハナちゃん、体が辛いなら言ってね」

「大丈夫よ~、お薬がよく効いているし、こうして孫や孫婿が顔を見せてくれるからすぐ元気になっちゃうわ」


ハナちゃんは、もうすっかり律さんのファンになってしまったようで。
彼の話をしている時は、いつも目がキラキラしている。
家に帰ったら、律さんにお礼を言わなきゃ。
彼の好きなご飯も用意して日頃も感謝も伝えて――――と、思う日に限ってお店のお客さんがなかなか帰ってくれず。
家に着いたのは、深夜2時を回っていた。


「……ただいま」


この時間だったら、律さんはもう休んでいるかも。
起こしてはいけないので、電気は付けないままリビングに入り、カバンをテーブルに置く。
それからハンカチを取り出そうとして、スマホが光っていることに気が付いた。
着信が5件、メールが……、


「遅かったな」


リビングの電気がパチッと付き、部屋の奥から律さんが現れた。


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