誠に不本意ではございますが、その求婚お受けいたします


私があまりに素直なのが意外だったのか、律さんは組んでいた腕を解いた。
それから不思議そうに私の顔を見つめている。
どうして、不思議そうって?
私が笑っていたからかもしれない。


「心配してくれて、ありがとうございます」

「別に心配なんて」

「ハナちゃんのお見舞いにも行ってくれたそうですね! それもありがとうございます」

「……百花には言うなって口止めしたのに」

「こんな時間ですけど、ご飯食べますか? さらっとお茶漬けでも」

「あぁ……頼む」


律さんって、口下手だけど本当に優しい。
心配してくれる人がいるって、こんなにも温かい気持ちになるんだね。
『良い旦那さんね』そうだと思う。
彼に心から愛されて妻になる人は、幸せだろうなぁ。


「ちょっと待っててくださいね!」


ささっと着物を脱いで普段着に着替えてから、キッチンに向かう。
冷ご飯と、焼鮭のほぐし身と、わさびパウダー……海苔は確かここにあったような、と戸棚の上を開けたのはいいけど、結構高い場所にある。
だけど踏み台を持ってくるのが面倒だった私は、背伸びをして取ろうと手を伸ばした。
――――と、


「これか?」

「あっ……はい、そ、そうです」


律さんが真後ろから手を伸ばして海苔の缶を取ってくれたのは、いいけど。
密着した体にドキドキしてしまい声が震えた。


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