誠に不本意ではございますが、その求婚お受けいたします
「り、律さんって背が高いですよね! 何センチあるんですか?」
「……185」
「すっごい! 学生の頃は何かスポーツを?」
「バスケだ」
「わぁ、それっぽいですね! シュートとかお得意でした?」
「別に普通だと思うけど……どうした? そのテンションの高さは」
あなたのせいですよ!
無駄にドキドキさせられたせいで、もうどう接すればいいか分からない。
冷静を装うとすればするほど、些細なポイントに目が行く始末で……。
「洗い物は俺がする」
洋服の裾を捲った時に見えた逞しい腕とか。
自分のお茶碗と私のお茶碗を持ち上げる大きな手とか。
シンク台に向かって立つ広い背中とか、腰の高さとか。
「じゃぁ、私、もう休みますね」
「あぁ、おやすみ」
そういうところですよ。
体を捻りこちらに向けられた優しい横顔に、ドキドキが止まりそうにない。
* * *
「え! 初恋の相手が見つかった!?」
土曜日の昼下がり。
果歩と少し遅めのランチを取っていた私は、近況報告からシンお兄ちゃんが律さんのお兄さんであったことを話した。
つまり、KIRIGAYAグループの専務が初恋の相手だったというわけで、彼女の驚きも大きい。
「びっくりだよね」
「そりゃそうよ~むしろ、今までどうして気が付かなかったの?」