誠に不本意ではございますが、その求婚お受けいたします

結局、この日は村田さんの他に数名のお客さんが来店しただけだった。
売り上げの少なさもさることながら、頭を悩ませることも最近あって……。

閉店後は片付けと、翌日の仕込みをして帳簿を付ける。
それから家に帰って、着物を干して、シャワーを浴びると、大抵深夜1時を過ぎている。
朝は5時に起きてお弁当を作り、部屋の掃除、雑用、洗濯をして出社。
電車の窓に映る自分の姿を見て、げんなりした。

(……肌ボロボロ)

気が付けば、髪も枝毛だらけだ。
無理ができなくなってきたとしみじみ思う、27歳。
美容院なんていつ行ったっけ?


* * *


「百花、おはよ」


会社のエントランスを歩いていると、後ろから声をかけられた。
森下 果歩(モリシタ カホ)」。
同じ時期に同じ派遣会社からこの会社に派遣されたことが縁で親しくなり、今では何でも言い合える仲だ。


「おはよう」

「どうした~? 酷い顔してるけど」

「それって肌が? それとも表情が?」

「両方。どうせ寝不足なんでしょー。アンチエイジングに気を遣わなきゃいけないお年頃なんだから、ちゃんと寝ないと」


そういう果歩だって同じ歳なのに、毎晩飲み歩いてるじゃない。
なのに、10代のようなプルプルお肌をしてるってどういうこと?


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