誠に不本意ではございますが、その求婚お受けいたします
仕事では専務を任されていて、美人の奥さんがいて、何不自由ないように見えるけど……。
見た目で判断したらダメだね。
そう反省していると、不意にお兄ちゃんが肩を震わせて笑う。
「冗談だよ、ほんと純粋なんだから」
「からかったんですか!」
「ごめんごめん、百花ちゃんがあんまり可愛いからさ。でも、丸っきり嘘じゃないよ。それなりに幸せだけど、物足りなさを感じてる」
「物足りなさ、ですか?」
「強いて言うなら休みが欲しい。旅行に行ったり映画を観たりする時間が欲しいかな」
そうか、仕事が忙しいんだろうなぁ。
そのハードさは、律さんを見ているから分かるけど、体を壊したら元も子もないもの。
たまには、ゆっくり好きな時間を……。
「あ、そうだ!」
「ん?」
「これ、さっき律さんから貰ったんですけど、お姉さんと行って来てください」
「ミュージカルのチケット?」
お兄ちゃんはチケットを手に取り、まじまじと見つめる。
「 この劇団、すごく人気なんですよ。お芝居はお好きですか?」
「好きだよ、いいね。どうせなら一緒に観に行こうよ」
「え?」
「僕は好きだけど、残念ながら奥さんはこういうのに興味がなくてね。だから、百花ちゃん、一緒に行こう」
――――と、その時だった。