誠に不本意ではございますが、その求婚お受けいたします
そんな私の心の声を読んだのか、果歩はニッと笑い、「毎晩、良い男の生き血を吸っているからね」と囁いた。
「なんですって……!」
「あはは、冗談に決まってるじゃん。でも、恋愛は大事だよ? 良い男と交流するとね、エストロゲンが分泌されて肌がツヤツヤになるの」
「エストロゲンねぇ……」
「百花もいい加減、初恋を引きずらすに彼氏を作ればいいのに」
「別に引きずっているわけじゃ……」
「あ、ほら。例えば、ああいう男とキスすると半年分くらい若返るだろうなぁ」
そう言ってハンターの目になった果歩の視線を辿ると、エントランスを大股で闊歩する男性が目に入った。
すらりと高いモデル体型に合わせたブラックスーツに、高そうな靴。
遠くからでも目を惹く整った顔に、溢れ出るオーラ。
確かに果歩の言う通り「良い男」の部類に入るのだろう。
でも、あの人……。
「誰だっけ?」
「知らないの? 常務よ、常務」
「常務ってこの会社の?」
「そう! KIRIGAYAグループの常務取締役。桐ケ谷 律」
「へー」
「もう、百花は本当にこういうのに興味ないよね。常務はKIRIGAYAグループ社長の次男ってだけじゃなくて、ルックスよし、スタイルよし、頭よしの3拍子が揃っているんだから」
世の中には生まれながらにして恵まれている人もいるもんだなぁ。
私の感心をよそに、果歩の熱弁は続く。