誠に不本意ではございますが、その求婚お受けいたします
やっぱり、お兄ちゃんとの間に何かがあるのね。
でもだからって一方的にそんなことを言われて、はいそうですか、って聞けるわけがない。
「理由を教えてください」
「君が知る必要はない」
「さっき、家族っていいましたよね? 家族の問題なら私にだって知る権利はあるはずです」
「あれは……兄貴の手前そう言っただけだ」
「じゃぁ、私は家族じゃないんですか?」
「書類上だけで言うなら家族だ。あくまで書類上だけどな」
近づけたと思えば、遠くなる。
たとえ、書類上の夫婦だとしても、心を通わすことができてきたと思ったのに。
またそうやって、心を閉ざしてしまうんだね。
「とにかく俺と結婚している以上、兄貴と君は義理の兄妹になるんだ。軽率な行動で、周囲に誤解を招く行動は慎んでくれ」
「……分かりました」
私が頷くと、律さんは厳しい表情のままスマホを耳に当てた。
「ゆみか? 俺だ。悪いが妻を家まで送ってくれないか。今、駐車場にいる」
「結構です、歩いて帰ります」
「何を言っている? あっ、おい」
何だかものすごく腹が立った私は、律さんの制す声を無視して歩き始めた。
隠し事をされていることも、のけ者にされることも、他人扱いされることも、心を閉ざされることも、部下の女に家まで送らせようとすることも。
何もかもがむかつく!