誠に不本意ではございますが、その求婚お受けいたします
ハナちゃんの年齢を考えれば、辛い治療はせずに残りの時間を穏やかに過ごして欲しいという気持ちもあるけど……。
もうこれ以上身内を失うのは、嫌だよ。
「百花、さっきから電話が鳴ってるようだけど?」
「え? あ、本当だ」
「もう行きなさい、お店も忙しいんでしょう」
「うん。じゃぁ、また明日ね」
ハナちゃんに手を振り、病室を後にする。
携帯電話の通話可能エリアまで移動して、スマホを確認すると意外な人からの着信が入っていた。
* * *
「すみません、遅くなりました」
「いいの、急に呼び出したのはこっちなんだから」
さっきの電話はお姉さん、つまりお兄ちゃんの奥さんからで、一緒にランチはどうかというものだった。
指定された某ホテルのレストランまで、急いで向かったものの40分程待たせることになり。
お姉さんは既にワインを飲み始めていた。
「料理はお任せコースでいいかしら? それとも何か食べたいものがある?」
「いえ、お任せコースをお願いします」
「あなたのそういうところ、好きだわ」
ん? どういうところ?
首を傾げた私を見て、お姉さんは優雅に微笑む。
・ ・
「自分の意見がはっきりしているところ、コースでいいじゃなく、コースを、と言うところ。育ちが良いのね」
「いえいえ、そんな……」