誠に不本意ではございますが、その求婚お受けいたします


生まれながらにしてお嬢様のお姉さんに、そんなことを褒められてると恥ずかしくなってしまう。
まだ数回しかお会いしていないけど、いつ見ても上品。
この人は他人の言動に振り回されることなんてないんだろうなぁ……。

――そう思ったのだけど。


「最近、新が浮ついているのよ」

「お兄ちゃ……コホン、お兄さんが?」

「妙に上機嫌で、スマホを見てはニヤニヤしたり。そうかと思えば考え込んでいたりして。浮気してるんじゃないかしら」

「まさか、そんな」


誤解ですよ、それはきっと!
いや、でもどうなんだろう、絶対にないとも言い切れない。


「そういえば、最近急にジムに通いだしたのよ。朝もジョギングに行って、帰った後は念入りにシャワーを浴びているの」

「それは……」


限りなく黒に近いグレーだよ!
え、まさかお兄ちゃんに限って浮気をするなんて思えないけど。


「だから私、探偵を雇うことにしたの」

「え!?」

「だって、新が他の女と一緒にいるなんて考えただけで気が狂いそうなんですもの。スマホと車にGPSも付けて、徹底的に監視するわ」

「さ、さすがです」


お金持ちの本気って恐ろしいな……。


< 73 / 102 >

この作品をシェア

pagetop