誠に不本意ではございますが、その求婚お受けいたします


* * *


「――――ハナちゃんッ!」


病室のドアを勢いよく開けて中に入った私の目に飛び込んできたものは、ベッドの上で酸素マスクを付けたハナちゃんの姿だった。
傍に寄って声をかけると、瞼がピクピクと動く。
それから、ゆっくりと目が開いた。


「ハナちゃん!」

「あぁ……もも、か? ごめんね、心配かけたね」

「心配するのは当然でしょ、大丈夫なの?」


あぁ、だめだ、涙声。
ハナちゃんは、私の方へと手を伸ばし、ゆっくりと頷いた。


「だい、じょうぶよ」

「本当に?」


握りしめた手に力をこめる。
問い掛けに答えてくれたのは、ハナちゃんの主治医だった。


「一時は危ない状態でしたが、持ち直しました。詳しい説明は、別室でしましょう」

「はい」


良かった、まだ逝かないでくれて。
でも先生の表情を見る限り、相当厳しいのだろう。
辛いけど、ちゃんと受け止めなきゃ。
ちゃんと……。


「ハナちゃん、また後で来るね」


できるだけ明るい声と笑顔でそう言い、先生に続いて病室を出る。
しかし、後ろ手でドアを閉めた瞬間、足の力が抜けた。


「百花!」


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