眠る子犬
私の名前は堀北ゆういである。
先週に22歳になったばかりで看護士をしている。
趣味は映画鑑賞、ホラー映画ならクイズ番組にでれるほど見ている。
ホラー映画を深夜にチョコレートをかじりながら一人で見る事が至福のひと時である。
しかし私がホラー映画の話をすると誰もが眉をしかめて話題を変えようとする。
男と一緒にホラーを見たこともあったが男のクセに情けない声をだして怯えるので冷めてしまい、それからは一人で見る事にした。

看護士という仕事について2年が経つ。
私の担当は主に末期のガンの患者である。
糞尿の世話から食事まで、爺さんにお尻を触られるのにも慣れた。
2年間で何人の人間の死を見たのだろうか?
35人目から人の死を日記に書くのを止めた。
しかしホラー映画のような恐怖と死はこの病院にはなかった。
2年間で覚えたのは、疲れずに仕事の効率を上げる事と病院での人の命は全て金のためである事だ。
患者の延命をすればするほど病院にはお金が転がってくる。
点滴一本で1000円入ってくる、ほとんど詐欺同然の商売だ。
点滴の栄養なんてコップ一杯のミルクにも劣るのに。
私達は金のために治りもしない抗がん剤を患者に与え続ける。
抗がん剤の副作用で髪の毛が抜け落ち、骨がボロボロになっても与え続ける。

金のために全身にがん細胞が転移している患者に私は笑顔で言う。
「ちゃんとお薬を飲めば治りますから我慢してくださいね」
患者はありもしない生きる希望を夢見て痛みを我慢して癌と戦う。
私の給料のために苦しんでいるのも知らずに。

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