結婚記念日 ~15年目の小さな試練 番外編(3)~
「あの時みたいに、もっと遠慮なく色々言ってくれたら良いのに」
「……色々、って?」
俯いたまま聞くと、カナは嬉しそうに笑いながら、わたしの横に移動してきた。それから、しゃがみ込んでわたしの顔を下から見上げた。
身長差が三十センチ近くあるから、いつも見上げるのはわたしの方。だから、カナに見上げられて何だかとても変な感じがした。
「寂しいとか、一緒にいてとか、さ。あの時、拗ねて口を尖らせたハル、ムチャクチャ可愛かったよ」
もうダメ。
……穴があったら入りたい。
二度と、お酒なんて飲まないんだから。(あの時だって、お酒を飲もうなんて思ってなかったけど……)
わたしは涙目になりながら、テーブルに突っ伏した。
そんなわたしのお向かいで、カナが昼食の準備を再開したのが音で分かる。カチャカチャとカトラリーが並べられる音がする。
じき、カナは
「ハル、用意できたよ。食べよ?」
と言って、よしよしとわたしの頭をなでた。
「ごめんね。もう、からかわないから」
その声が、あまりに申し訳なさそうに聞こえて、その瞬間、今日がカナの誕生日なのを思い出した。思い出すと、逆に申し訳なくなってくる。
今日くらい、何を言われても我慢しなきゃダメ?
ううん。でも、我慢はムリ。だって、恥ずかしくて身の置き所がない気持ちは、自分ではどうしようもないんだもの。
「……もう、言わない?」
顔を上げると、カナがホッとしたように頬を緩めた。
「言わない、言わない」
「ホント?」
「うん」
「約束よ?」
「ん。……いつか、一緒にお酒を飲む日の楽しみにとっとく」
カナは楽し気にニコッとものすごく良い笑顔を見せた。
「……お、お酒なんて、絶対に飲まないもん」
わたしがそう言うと、カナはまたクスクスと楽しそうに笑った。
「……色々、って?」
俯いたまま聞くと、カナは嬉しそうに笑いながら、わたしの横に移動してきた。それから、しゃがみ込んでわたしの顔を下から見上げた。
身長差が三十センチ近くあるから、いつも見上げるのはわたしの方。だから、カナに見上げられて何だかとても変な感じがした。
「寂しいとか、一緒にいてとか、さ。あの時、拗ねて口を尖らせたハル、ムチャクチャ可愛かったよ」
もうダメ。
……穴があったら入りたい。
二度と、お酒なんて飲まないんだから。(あの時だって、お酒を飲もうなんて思ってなかったけど……)
わたしは涙目になりながら、テーブルに突っ伏した。
そんなわたしのお向かいで、カナが昼食の準備を再開したのが音で分かる。カチャカチャとカトラリーが並べられる音がする。
じき、カナは
「ハル、用意できたよ。食べよ?」
と言って、よしよしとわたしの頭をなでた。
「ごめんね。もう、からかわないから」
その声が、あまりに申し訳なさそうに聞こえて、その瞬間、今日がカナの誕生日なのを思い出した。思い出すと、逆に申し訳なくなってくる。
今日くらい、何を言われても我慢しなきゃダメ?
ううん。でも、我慢はムリ。だって、恥ずかしくて身の置き所がない気持ちは、自分ではどうしようもないんだもの。
「……もう、言わない?」
顔を上げると、カナがホッとしたように頬を緩めた。
「言わない、言わない」
「ホント?」
「うん」
「約束よ?」
「ん。……いつか、一緒にお酒を飲む日の楽しみにとっとく」
カナは楽し気にニコッとものすごく良い笑顔を見せた。
「……お、お酒なんて、絶対に飲まないもん」
わたしがそう言うと、カナはまたクスクスと楽しそうに笑った。