王子系ドクターと溺愛新婚生活〜家政婦ですが結婚するなんて聞いてない!〜
やり方を一つ一つ教えて、爽介さんがその通りに動いていく。
スイッチを押すと、機械の中で風が出る音がし始めた。
「おおっ、動いた。葵はなんでも出来て凄いね!」
それはこっちのセリフだ。
家事は出来なくても、勉強が出来て、国内トップクラスのエリート集団の中にいる医者なのだから。
だけど、私は爽介さんが努力していることを知っているから、それを口には出さない。
「私がすごいんじゃなくて、この機械がすごいんですよ」
「それでも......。美味しいご飯を作って、家事も完璧にできる。そんな葵はすごいよ」
真面目に褒められると照れてしまう。
逃げ場のないキッチンで、しかも、すぐ隣にいるという近距離。
その上真っ直ぐに私を見つめて言ってくるのだ。
必死に抑えていたはずのドキドキが戻ってきそうになる。
「あ、ありがとうございます......」
なんだか、洗い物をしただけなのにいつもより数倍は疲れた気がした。