王子系ドクターと溺愛新婚生活〜家政婦ですが結婚するなんて聞いてない!〜
私はビクビクしながら、橋本さんの後を付いて、廊下を歩いた。
どこに向かっているのかは分からないけれど、上に向かっているのは確かだ。
面接の緊張よりも、その偉い人を相手に失礼にならないかが心配になる。
患者さんにも会わなくなり、いくつかの角を曲がった時、ある扉の前で橋本さんは立ち止まった。
「こちらでお坊ちゃまがお待ちです」
その言葉に、ドクンと心臓がなる。
これが、緊張からなのかは分からないけれど、気持ちが落ち着かない。
扉にかかっている金のプレートには、“湊 爽介”と印字されている。
どうやら、先生には一人一部屋与えられるらしい。そして、この階は先生たちの部屋が並んでいるのだろう。
廊下には私達しか居なかった。
「は、入っていいんですか?」
恐る恐る橋本さんに尋ねると、どうぞと言うように頷かれる。
私は、ふぅーっと1度深呼吸をしてから、扉を控えめにノックした。
「はい。どうぞ」
中から、若くて優しそうな雰囲気の声が聞こえる。