王子系ドクターと溺愛新婚生活〜家政婦ですが結婚するなんて聞いてない!〜
断る前に、合格が決まってしまった......。
仕事を選ぶ余裕なんて、今の私には無いから、合格は嬉しいはずなんだけど。
思わず、ぽかんとして男を見ていると私とは違い、相手は嬉しそうな表情を隠そうともしていない。
「これに名前と住所書いて」
そう差し出された紙は4つ折りになっていて、上をバインダーのクリップで止められていた。
私は言われるがままに、ペンを渡され、記入していく。
サラッと書いてバインダーとペンを返すと、男はニコッと笑った。
「改めまして、僕は湊 爽介。よろしく」
男が名乗ったのは、ドアのプレートに書いてあったのと同じ名前だった。
そこで、初めて名前を本人から教えて貰ったことに気がつく。
来る途中で橋本さんが言っていたかもしれないけれど、お坊ちゃまと呼ばれる方が印象的過ぎて、聞き流していたかもしれない。