王子系ドクターと溺愛新婚生活〜家政婦ですが結婚するなんて聞いてない!〜
それから男は、橋本さんを呼び出し、名前を書いた紙を渡して、どこかに持っていくように小声で指示を出していた。
そして、私に向き直って、訳の分からないことを言う。
「契約完了だね。これで僕達は夫婦だ」
「は?」
夫婦とは?どういうことだ。
これは、仕事の面接だったはず。
一体どこに夫婦になる瞬間があったのだろう。
「キミは今日から湊 葵になる」
勝手に進んでいく話に、私は目が点になるしかない。
「どういうことですか?」
明らかに戸惑っている私に、男ーー湊さんも困ったような顔をした。
「えっと、僕達籍を入れたんだけど......」
「いつですか?」
「今......?」
そう言われて、またしても頭の回転が追いつかなくなる。
今ってどういう事!?
今の流れでそんなことはーー、あったわ......。
嘘だと思いたいけれど、まさか名前と住所を書いた紙が婚姻届だったとか。
確かめるように湊さんを見ると、そのまさかだと頷いた。