王子系ドクターと溺愛新婚生活〜家政婦ですが結婚するなんて聞いてない!〜
その瞬間を待っていました。と言わんばかりに、僕は声を張り上げる。
「あ、葵ちゃんっ!」
声が届いたのだろう、キョロキョロ見回したあと上に目を向けた時、僕と目が合った。
「先生?......そっち行くから待ってて!」
そう言ったその子は、競技が終わったばかりだというのに、また走り出した。
数分も経たないうちに、目の前に女の子が現れる。
「......」
「来てくれたんだ......」
「うん」
呼んだはいいけれど、何を話したらいいのか纏まらず、会話が続かない。
どうしようと思いチラッと見た時、目があってしまう。
「そ、その頭で来たの?」
頭?なんのことだろう。
いつも通りなはずなんだけど。
「それ、私があげたやつでしょ?」
そう指したのは、僕の前髪を上げているひまわり柄のシュシュだ。
あれ以来、これを付けると少し前向きになれる気がして付けている。
初めは照れくさがったけれど、今はもう当たり前になっていて慣れた。