王子系ドクターと溺愛新婚生活〜家政婦ですが結婚するなんて聞いてない!〜


だけど、それを指摘されるのは少し恥ずかしい。



「そ、それより、足治ったんだね」


「う〜ん、まだ完璧じゃないんだけどね......だから、負けちゃったけど」



分かりやすく話を変えた僕に、嫌な顔ひとつせず話を合わせてくれる。


彼女の言う“負けちゃった”は、さっきの試合で2位だったことだろう。

それでも、2位だ。

まだ完治していないと言っているにも関わらず、この結果はすごいと思う。



「がんばったんでしょ?」



僕は、何を言っているのだ。そんなの、本人がいちばんよく分かっている筈なのに。



「もちろん。でもやっぱり悔しい......」



ここに来て、初めて落ち込んだ素振りを見せた。


その姿に、僕はかける言葉を失敗したと思う。


励ますのも違う気がするし、同情した所で、上辺だけだと思われてしまう。

迷った末に、僕はポケットに入れていた小さい袋を出した。



「あのさ、これ......」


「ん?」


< 72 / 183 >

この作品をシェア

pagetop