王子系ドクターと溺愛新婚生活〜家政婦ですが結婚するなんて聞いてない!〜
だけど、それを指摘されるのは少し恥ずかしい。
「そ、それより、足治ったんだね」
「う〜ん、まだ完璧じゃないんだけどね......だから、負けちゃったけど」
分かりやすく話を変えた僕に、嫌な顔ひとつせず話を合わせてくれる。
彼女の言う“負けちゃった”は、さっきの試合で2位だったことだろう。
それでも、2位だ。
まだ完治していないと言っているにも関わらず、この結果はすごいと思う。
「がんばったんでしょ?」
僕は、何を言っているのだ。そんなの、本人がいちばんよく分かっている筈なのに。
「もちろん。でもやっぱり悔しい......」
ここに来て、初めて落ち込んだ素振りを見せた。
その姿に、僕はかける言葉を失敗したと思う。
励ますのも違う気がするし、同情した所で、上辺だけだと思われてしまう。
迷った末に、僕はポケットに入れていた小さい袋を出した。
「あのさ、これ......」
「ん?」