王子系ドクターと溺愛新婚生活〜家政婦ですが結婚するなんて聞いてない!〜
「......失礼します」
返事はせずに、部屋を出る。
さて、どうやって逃げようか。
考えながら、自分に与えられている部屋に戻る。
医院長室はこの部屋の真上だった為、すぐに戻っては来れたけれど、その部屋には居ないはずの人が居た。
「なんの用?」
ここは僕の部屋なんだけど?
あからさまに不機嫌さを丸出しで言ったのに、目の前のコイツは、1ミリも怯まない。
「全く、つれない奴。その不機嫌さは医院長に何か言われたんだな」
「圭......」
何も言わなくても分かるなんて、さすが腐れ縁だ。
ーー幼なじみとも言うけれど。
「結婚しろ、だってさ」
「これまた突然だな......その子はどうするんだ?」
圭が視線で示した先には、僕がデスクに飾っているシュシュがある。
このシンプルな部屋の中で、唯一可愛いと思われる物だ。
約8年前に貰ってから、ずっと職場の自分のデスクに置いてある。
これを見ると頑張ろうと思えるから不思議だ。