王子なドクターに恋をしたら
雲間から降りてきた月光に彼の顔が照らされた。

い、いたあ~~~っ!!

「君、この間の子だよね?良かった…」

「え?」

内心嬉しくってドッキドキで固まってるとそう言われ、何が良かったというのだろう?とホッとした顔をする彼に首を傾げる。

「また、逢えないかなと思ってたんだ。ここに来たら逢えるかなと思って」

「え?まさか毎日ここに来てたとか?」

「ううん、たまたま今日来てみただけ」

それは、すごい偶然だ。
あたしだってしょっちゅうここに来るわけじゃない。
あたしも彼に逢いたいなと思ってたまたま来たら、彼もそう思ってここに来ていたなんて勝手に運命感じちゃう。

「ねえ、良かったらちょっと話さない?」

「う…は、はい」

思わずうんと言いそうになって慌てて敬語で返事する。
どう見ても彼は年上だし立派なお医者様なはずだから気安く話しちゃいけないと思った。
ふふっと笑って、隣どうぞと彼は促してくれた。
おずおずと隣に来て柵から夜の海を眺めてから、ゆっくりと横を向いた。
雲に隠れては現れる月に照らされた綺麗な顔があたしを見ていてドキッと胸が高鳴った。

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