王子なドクターに恋をしたら
和泉くんが病院に勤務の間、あたしは変わらず実家の花屋で働いて夜はこの家に帰ってくる。
和泉くんが帰る前には夕食の準備が出来てる算段で調整するつもり。
そこは努め先が実家だけあるので融通が効くから安心だ。

「あ…」

実家とか、ここに帰ってくるとか、まるで結婚でもしたかのような言い回しに今更気付いてあたしは一人であたふたした。
明日美に言われた通り通い妻みたい、まだ結婚してないから通い恋人だけど。
そう思うこと自体なんて言っていいか…恥ずかしいというかくすぐったい感じだ。

「ん?どうした?顔赤いけど」

「なっ何でもない!」

ブンブン首を振るあたしを和泉くんは不思議そうな顔で覗いてくる。
赤い顔を見られたくなくて背中を向けた。

「こら、そっぽ向くな」

肩を掴まれてくるっと方向転換させられた。
俯きがちに目を合わせるとふんわり笑った和泉くんはチュとあたしの頬にキスをして抱きしめる。

「やっぱり可愛いなちゆは」

「へ?」

頭を撫でながら頭上にもキスを落とされた感触が伝わってくる。
急に甘くなった和泉くんにどぎまぎしてあたしの心臓は暴れだした。
ぎゅと抱きしめる力が強くなってあたしも背中に腕を回した。

温かい和泉くんの腕の中にいるとドキドキするのに安心する。
< 117 / 317 >

この作品をシェア

pagetop