王子なドクターに恋をしたら
明日美の歯切れの悪い返事はどうしてか?その理由はすぐに知ることとなった。

3月に入り天気がいいときは雪解けが進むけどまだまだ冬真っ只中の北国斗浦部町。
外は真冬でも店の中は春のように色とりどりの花で埋め尽くされいい香りが漂ってくる。
でも冬は水が凍りのように冷たくて毎年あかぎれを起こしてしまうあたしの手はいつも真っ赤だ。
今も冷たいのを我慢しながら花の水揚げ作業をしているとお客様が入ってきた。

「いらっしゃいませ~」

背の高いすらっとした女性が入ってきて、その表情がお客さまではないような気がして気になった。
花を買いに来る人ならワクワク顔で花を見るのにその人はまるで興味なさそうに見回してるだけ。
つい怪訝な顔で見ているとその人と目が合った。
ツカツカとこちらに近付いてきたと思ったらあたしを舐めるようにじっと見てくるから気味が悪い。

「あなたが高槻先生の彼女?」

「はい?」

不躾な言い草に思わず剣のある声で聞き返してしまった。
その女性はふんと鼻で笑ったかと思うとにやりと笑う。

「な~んだ、あの高槻先生の彼女って言うからもっと美人で色気ある大人と思ってたらこんなお子様だったとは」

「は…!?」

確かに美人でも色気も無いし和泉くんに学生と間違われたことあるけどあたしは立派な大人のつもりだ!大体見ず知らずの人にそんな言われる筋合いないぞ!

そう思うも、随分な言いようにあたしはぽかんと口を開けて唖然としてしまった。
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