王子なドクターに恋をしたら
あたしの一番の懸念は晴れた。
喜んでいい筈なのにあたしの気分は浮かないまま。

「まだ心配?何なら和泉さんの戸籍謄本とか取り寄せようか?」

「いっいえ!そこまでしなくても信じてますから!」

いくらでも証拠は出すわよ?という聡子さんを慌てて止めた。
そこまでしてもらわなくても親戚である聡子さんに確かめられたんだから十分だこれ以上ご迷惑はかけたくない。
でもじゃあなぜそんな浮かない顔してるの?と追求されてあたしはついポロッと言ってしまった。

「和泉くん、時々こっちに来てるんですよね?でもあたしは…明日美の結婚式以来和泉くんと逢ってないんです」

「まあ…!やっぱりそうなの?」

「やっぱり…?」

訳を知ってるような口ぶりに思わず聡子さんを凝視してしまった。
聡子さんは一瞬しまったという顔をした後、逡巡するように目を泳がしあたしと目が合った。
…私も、あまり詳しくはわからないんだけど…と言いにくそうにした後教えてくれた。

「和泉さん今ちょっとこちらとあちらの病院の折り合いが悪くて大変みたいでね…」

「え…?」

「あ、険悪とかそういうんじゃないのよ?あちらの明里病院の院長先生は主人と同期で親友でもあるから、だから主人が腰を痛めた時和泉さんを遣わしてくれたくらいだし…」

「はあ…」

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