王子なドクターに恋をしたら
院長先生同士が同期で親友とは初耳だ。
そのお陰で和泉くんとあたしは出会ったんだなと頭の片隅でふと思った。

「でもね…上司の方が和泉さんがこちらに来る事を快く思ってないみたいで、こちらに来る条件を出したみたいなのよ」

「条件、ですか?」

「そう、それが彼女、千雪さんとは逢わないってことみたい」

「は?何でですか?」

「いわゆる…彼女にうつつを抜かすな、的な…」

和泉くんがあたしに逢いたいが為にこちらに通ってることをその上司が知ってるのかな。
まさか向こうの病院で和泉くんは肩身の狭い状況なのだろうか?
そういえば上司が無料難題をふっかけてきて困ると前にぼやいてた。
もしかしたら和泉くんは今頃窮地に追い込まれてるかもしれない。
知らないで逢いに来てくれない和泉くんを信じることも出来ずにモヤモヤしてたなんてあたしはなんてバカなんだろう。

「あ、このことは和泉さんには内緒ね?」

「え?なぜですか?」

今すぐにでも和泉くんに謝りたい衝動に駆られいても立ってもいられないというのに止められた。

「千雪さんには言ったらいけないみたいだから。それも条件の内に入ってるみたいなの」

私が言っちゃってその上司に知れたら和泉さん可哀想でしょう?と、自分が言った手前申し訳なさそうにしてる聡子さんを見て浮かし気味だった腰をまたソファーに落とした。

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