王子なドクターに恋をしたら

「あ!違うよ?身体だけが目的じゃなくて、ちゆが好きだから、傍にいる間は触れたくて仕方がなくなるんだ。だから逢う度ちゆの身体を求めてたのは事実で上司の言うことはあながち間違ってないと言う意味で。それに、あの結婚式の日なんて嫉妬に駆られて強引に抱いてしまったし…ちゆを思いやれなかった自分が情けないというか…反省したんだ」

和泉くんがあたしの顔色が変わったのを察知して慌てて説明してくれたけど、そんなあけすけに言われるとますます照れてしまうじゃない。
顔が熱くて思わず頬を押え和泉くんを見た。
首の後ろを擦って目を泳がす和泉くんがなんだかかわゆい。

「あの…あたしも、和泉くんに触れたいのは一緒だから…反省する必要ないよ。触れてくれないと、あたしの方が寂しい…」

確かに会ってる間は毎日のように抱き合った。でもあたしは決して嫌だったことはないしとっても幸せだった。
隣に座る和泉くんの袖をキュッと握って、恥ずかしいけどそれだけは伝えたい。

「ちゆ…ありがとう」

袖を握ったあたしの手の上に和泉くんの大きな手が乗った。
目を細め優しく微笑んだ、と思ったら和泉くんはなぜか眉を下げ困った顔をする。

「でもね、斗浦部に通うことにしたのもちゆに逢いたいがための不純な動機からだし僕は反省すべきなんだ。黒崎さんに…僕の上司だけど、そんな僕に医者としての立場を疎かにしてないというのなら暫く逢うのを控えろと言われた。黒崎さんは僕の腕を買ってくれている。だからこそ、今の僕が私生活に現を抜かしてる場合じゃないと心配してくれているんだ」

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