王子なドクターに恋をしたら
「お父さんも余裕がなかったから素っ気なかったのかなあ…」

「素っ気ない？」

和泉くんのお父さんの冷たい態度を思い出してつい呟いてしまった。
お兄さんに聞かれてしまったみたいでどういうこと？と聞かれた。
言っていいものか、と一瞬悩んだけど私も聞きたいと叶ちゃんまで心配そうに聞いてくれて話してしまった。
些細な出来事だったけど、あたしにはショックだったから和泉くんは気にしなくていいって言ってたけど、やっぱり気にしてしまう。

「父こそ大人げなく嫉妬してるだけだ気にしなくていい」

話を聞いてお兄さんはくすくす笑い出した。
和泉が恋人を追いかけて親元を去ろうとしてるのが気にいらないだけだ君は何も悪くないと言う。
それはまるで和泉くんがあたしの為に斗浦部に移住すると言ってるみたいで、まさかと思った。
こちらの病院が本来の和泉くんの職場だし、あたしの為に通うことは出来てもそこまで考えてるとは思えない。

「和泉くんがそこまで考えてるなんて思えません」

「あのいつも飄々としてた和泉があんなに慌てたのは見たことがなかったんだ。やつの必死さを知ればわかるだろう」

何を思い出したのかお兄さんはますます笑いを堪えるように肩を震わす。


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