王子なドクターに恋をしたら
「君、顔が赤いけど具合が悪いのかい?診察に来た患者さん?」

「へえっ!?いえっ違います!」

振り向くと小柄で眼鏡を掛けた真面目そうな男性があたしの顔を覗き込んできた。
白衣を着てるからお医者様なんだろう。やけに顔が近くて一歩引いてあたしは慌てて首と手をブンブン振った。

「でも、さっきから様子がおかしいですよ」

「いっいえいえ何でもないですから!」

挙動不審なのはあたしもわかってますけど!
男性はまた一歩近付いてあたしの顔色を伺うのでまた一歩引いた背中に観葉植物が当たり揺れてしまった。
心配して声をかけてくれるのはありがたいけどほっといて欲しい。
じゃないと通り過ぎたばかりの和泉くんにバレ………

「ちゆ?」

「…ちゃったじゃな〜い」

あ~和泉くんに見つかってしまった。
小さく呟き恐る恐る声の主に視線を移す。
早く行ってくれというあたしの願いは通じなかった。

「高槻先生の患者さんですか?」

あたしの顔を覗き込んでいた男性は眼鏡を直しながらあたしと和泉くんを交互に見遣る。
和泉くんは真顔で近付いて来て観葉植物と白衣の男性に挟まれてるあたしの腕を引いて救出してくれた。

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