王子なドクターに恋をしたら
やっちゃったよ〜とパワハラ上司の顔を伺うと、ポカンと開いた口でまんまるになった目があたしを見て吹き出した。
「ふ…アッハハ!なんだねーちゃん面白いな!まさか説教されるとは思わなかった!」
意外にも笑い出した上司にあたしが目をまんまるくしてしまった。
隣に来た和泉くんと目を合わすと和泉くんも面食らってるよう。
「高槻が足繁く通うほどだからどんだけいい女かと思ってたんだが、今までと随分違う毛色だな?」
もっと色気ある悪女かと思ってたんだが、と勝手なことを言う。
「黒崎さん!彼女に失礼ですよ!」
「お?悪い悪い。まあいい、今日は見逃してやる」
和泉くんの鋭い声に気圧されることもなく、ニヤニヤ笑うパワハラ上司は踵を返して行ってしまった。
「ちゆ、嫌な思いさせてごめんね。黒崎さんは口が悪いんだ。あの人の言うことは気にしないで」
人は悪くないんだけど…と、和泉くんは申し訳無さそうにあたしに謝るのをあたしは苦笑いで返した。
ほんとに失礼だパワハラ上司。
そしてキツイ話題を置いていった。
今までと随分毛色が違うって……
「行こう」
考え込みそうになったあたしの手を取り和泉くんは歩き出しそれに大人しく付いていく。
俯き気味でさっきの言葉を思い出そうとしたとき通り過ぎる人達がこぞってあたし達を見ていることに気がついてはっとして顔を上げた。