王子なドクターに恋をしたら
ううん、と首を振るとキュッと繋いだ手に力が込められトクトクと心臓が高鳴った。
見つめ合ってるとキスしたくなっちゃう。
でもここは公衆の面前で和泉くんは白衣を着ていてお仕事中。我慢しなくては。

「そう…白衣」

「ん?」

「和泉くんの白衣姿始めて見た。すっごく似合ってる。かっこいいね」

「そ?」

和泉くんは自分の白衣姿を見下ろして首を傾げた。
うんうん頷いてその白衣姿を目に焼き付けるように見つめてると繋いでない方の手があたしの頬に触れる。
近付いてくる和泉くんのブルーの瞳。

え?これもしかして……
ここには桜を見てる人達も、通り過ぎてく通行人も沢山いるのに?
パワハラ上司との約束は?
心の中で焦りながらも期待してあたしは目を閉じた…。

「あっ和泉せんせえだあ!」

「え?…」

ふっと頬に触れてた手も繋いだ手も離れた。

「やあ、なおちゃん。今日は午後からの診察だったよね?もう来たのかい?」

和泉くんは5歳くらいの小さな女のコの前に跪きキラキラ目を輝かす彼女に向かって優しい笑みを見せた。
「ママがお昼あそこで食べてから行こうって言うから!あたしオムライス食べたの!」と女のコは元気に話してる。
その後ろでお母さんらしい綺麗な女性が和泉くんに会釈した。
あたしはそれをボケっと見てるだけ。
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