王子なドクターに恋をしたら
どこ行ってもあたしと和泉くんは注目の的みたいで興味津々のあの人たちは病院でもあんな感じで絡んでくるとか。
ラウンジに誘われたけど行かないから気にしないでと言われたけど、行かないとまた和泉くん一人でああやって質問攻めに合うんだろう。
あたしのせいでお仕事の邪魔になるのは嫌だ。

「いいよ行っても、それで気が済むんなら。あたしの話聞いても面白い事なんてないって思ったらもう聞いてこないでしょ?」

「ちゆ?」

目が合った瞬間、チン!とエレベーターが到着したようで扉が開いた。
薄暗くしんとした廊下に出たあたし達。

「ここは?」

「まずはサプライズ、楽しもうか」

和泉くんに連れられて重そうな大きな扉を開けると、ビューっ!と強風が吹きこんできた。

「お待ちしておりました。さあこちらへ」

男性が一人扉の前に立っていた。
呆気にとられているあたしの手を和泉くんが引いて歩き出す。
そこは外で、空が凄く近く感じる。
あたしたちは59階の屋上に立っていた。

「ひゃ~~~~!」

強風に煽られそうで和泉くんの腕に捕まると変な悲鳴をあげてしまった。

「あれ?ちゆは高いところダメだった?」

「だ、大丈夫だと思うけど風が強くて」

スカイツリーに昇った時はガラス窓に囲まれて怖いとは思わなかったけど吹き飛ばされそうな今は景色を見る前に足が竦む。
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