王子なドクターに恋をしたら
こんな体験二度とないだろう。
お兄さんに感謝しつつワクワクと緊張が止まらない。
思わず固唾を飲むと和泉くんが手を握ってくれた。

ふわっと浮くように離陸したヘリはスピードを上げて飛んで行く。

「わあ!すごい!きれい!見て!あんなに人も建物も小さいよ!ミニチュアみたい!」

窓から見える景色にあたしはすぐ釘付けになり興奮気味に叫んだ。
スカイツリーの展望台より上から東京の夜景を見れるなんて夢みたいだ。
大きかったビル街が小さく見える。そこから漏れる光り、流れる車のテールランプの列、人なんてもう見えやしない。
黒塗りの海沿いにある工場の夜景は映画のワンシーンのように煌めき、遠くでは夢の国のお城が微かに淡く光って見える。
そしてそこから花火が上がった。

「すごい!花火って上から見ても丸く見えるんだね!」

和泉くんを振り返って言うと和泉くんは外ではなくあたしを見ていた。

「和泉くん?」

「どうしたの?ほらもっと夜景を楽しんで」

「え?でも和泉くん夜景見てないんじゃない?」

「見てるよ、子どもみたいに喜んでるちゆを見てる方が楽しい」

「な、なにそれ?」

なんて恥ずかしいこと言ってくれるのよ。
一気に顔に熱が集まる。
< 231 / 317 >

この作品をシェア

pagetop