王子なドクターに恋をしたら
ズケズケと悪態を突かれてあたしは呆然としていた。
伊藤先生は慌てて幸田先生を止めようとする。

「お、おい幸田、彼女に失礼だろ」

「現実を教えてあげてるんだ。むしろ親切だろ?君は、高槻に何を与えられる?何もできないと悟ったならさっさと高槻の前から消えることだ」

「わ、悪い千雪ちゃん。こいつ相馬の事が好きなんだ。自分に振り向いてもらえないからって千雪ちゃんに八つ当たりを…」

「俺は別に相馬の事好きなんかじゃない!あいつら見てるとイライラするんだよ!好きなくせに他人行儀でこっちが気を使わなきゃならない空気出しやがって!」

「おい!それは千雪ちゃんには関係ないだろ!?」

揉めだした二人を前にあたしは居ても立ってもいられなかった。

「ご、ごめんなさい!あたし失礼します!」

ラウンジを飛び出し、しんと静まり返った廊下で佇み息を吐いた。

やっぱり相馬先生は元カノなんだ。
相馬先生なら医師として和泉くんに的確に励ますことも協力することも出来る。
一緒に同じ目標を持ち高め合っていけると、周りの人達みんなが二人の事を認めているんだろう。

あんな言い方されて悔しい。
でもあたしが和泉くんに与えられるものなんて何もない。
変な噂ばかりが立って和泉くんの足を引っ張っている。
あたしだってわかってるよ。
それでも…好きだけで一緒に居ちゃいけないの?
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