王子なドクターに恋をしたら


カチャンと物音が聞こえてあたしはびくっと肩を震わせた。
和泉くんが帰って来たという期待と、もしかして泥棒?っていう不安があたしの中でぐるぐる回り動けなかった。
それでも耳は神経が研ぎ澄まされたように誰かの足音と、リビングのドアが開く音を感知する。

「ちゆ…ここにいた」

パチっと電気がつけられて愛しい人の声が聞こえて振り返る。

「和泉くん…」

「おうちで大人しく待ってるってこういうこと?帰ったらレジデンスにいなくてびっくりしたよ」

「ごめ…ごめんね和泉くん…」

絶対怒ると思ったのに和泉くんは優しくあたしを気遣うようにソファーの前で跪いた。
優しい声にあたしの目には涙が浮かぶ。

「鍵をこっそり兄さんの家の玄関に置いていったよね。聡子さんに聞いてもわからないって言うし電話は繋がらないしちゆがいなくて焦った。家の荷物は全部無くなってたから斗浦部に帰ってるとは思ったけど、見当違いじゃなくてよかった…」

ホッとした顔をする和泉くん。
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