王子なドクターに恋をしたら
甘い余韻に浸りながら腕枕をされて頭を撫でてくれる優しい手にあたしはほうっと吐息を漏らした。
「幸田先生がちゆに言ったこと、本人から聞いたよ。ごめんね、僕の回りの人達の勝手な言い分でちゆに嫌な思いさせて悲しませてばかりだったよね」
優しく頭を撫でてくれる和泉くんに身を任せていたあたしは控えめに首を振った。
幸田先生の言ったことはその通りだと思ってすごく考えさせられた。
それでもやっぱりあたしは和泉くんのそばにいたいって強く思う。
「ちゆがレジデンスにいないとわかったとき僕は愛想つかされてしまったかと思ったよ」
「あたしの方が愛想つかされると思ってたよ」
「僕がちゆに愛想つかすなんて絶対無いよ。それは信じて」
真剣味を帯びた声でハッキリ言った和泉くんを見上げた。
「周りがなんと言おうと何があろうとちゆを手放すことは絶対しない。でも、とやかく言われるのは僕が不甲斐ないせいだ。だから僕はもっと強くならなきゃいけない」
「和泉くん?」
前を見据え思いつめたような表情にあたしは目が離せない。
それがふっとやわらぎあたしを見つめる瞳は甘く微笑む。
「ちゆといると癒やされるんだ。こうやって側にいるだけで勇気をもらえる。ちゆの力はすごいんだよ」
「そんなこと…ないよ」
そう言いながらあたしは嬉しかった。
和泉くんにとってあたしの存在意義は何だろうって、思ってたから。
なんの手助けも出来ないって思ってたけど、あたしも和泉くんの役に立ってるんだって自信をくれる。
和泉くんが必要としてくれる限りあたしはずっとずっと和泉くんと一緒に居たい。
「だけど、今は我慢しなきゃいけないときなんだ」
「え?」
「ちゆ…僕の気持ちは決まったよ」
……
衝撃的な展開。
あたしをこうまで一喜一憂させるのは和泉くんだけだ。